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【2023年度版を公開】いい生活が統合報告書の制作に力を入れる理由とは?

みなさま、明けましておめでとうございます。

IR担当をしている金岡です。
当社は2023年12月21日に「統合報告書2023」を公開いたしました。

この統合報告書については、内容を少しづつ改善しながら毎年1回発行を行っており、今回が3回目になります。
今回は、当社がなぜこの統合報告書に力をいれているのか、解説します。
ぜひ最後までお読みいただけると幸いです。


統合報告書とは

統合報告書とは、ESG(Environment:環境、Social:社会、Governance:企業統治)情報開示の拡充のため、上場企業に作成・開示が奨励されている新たなスタイルの情報公開の枠組みです。「国際統合報告フレームワーク (The International Framework)」に基づき、世界各国の市場で積極的な開示が奨められています。

株主価値とは

「国際統合報告フレームワーク」では、企業そのものの価値=株主価値を、下記のような図式で整理しています。

株主価値=市場付加価値+株主資本簿価=非財務資本+財務資本

ある企業の企業価値=株主価値は、その企業の純資産の金額と常に同じであるわけではありません。多くの場合、株主価値=株式市場で付いたその企業の株価の総額は、純資産額を上回ります。

そのため株主価値については、PBR(Price Book-value Ratio:株価純資産倍率)などの指標で、「純資産の○○倍」というような倍率で表されます。

企業の純資産の額を「株主資本簿価」といいます。
上記のとおり、株主価値は多くの場合株主資本簿価を上回るため、その差額を「市場付加価値」といいます。

「国際統合報告フレームワーク」では、この「株主価値」がどういう要因から発生しているのか、に注目して整理しています。
そして、その発生要因を「6つの資本」として分類し、モデル化しています。

6つの資本:
・財務資本:Financial capital
・製造資本:Manufactured capital
・知的資本:Intellectual capital
・人的資本:Human capital
・社会・関係資本:Social&Relationship capital
・自然資本:Natural capital

一つ目の財務資本は、その企業の帳簿上の純資産(=株主資本簿価)のことです。
そして、それ以外の5つの資本が、株主資本簿価を上回った部分である「市場付加価値」の発生要因である、とされています。

この5つの資本については、財務資本と異なり帳簿上に金額で表現されていないため、「非財務資本」とも呼ばれます。

なお、昨今話題になる「PBR1倍割れ企業」とは、株主価値が純資産(=株主資本簿価)を下回っていること、すなわち「非財務資本の価値がゼロ以下、マイナスと市場からみられている」ということを意味しています。

ESG投資は本当に企業価値をあげるのか

ESG投資とは、主にこの「非財務資本」への投資のことをいいます。

非財務資本は財務資本と異なり、帳簿上に金額として表れてこないため、「見えない価値」とも呼ばれます。
そのため「ESGへの取り組みが本当に株主価値をあげるのか」については、モデル上の仮説としては存在しているものの、これまで実証的な関連性の解明は困難とされておりました。

近年、このESG投資と株主価値との関連性について、実際の企業のデータをもとに統計調査で相関性を証明した研究が、ある日本企業で行われました。

この研究をもとに構築されたESG投資と株主価値の関連性の計算モデルは、研究者の名前をとって「柳モデル」と呼ばれています。

「柳モデル」とは

日本の製薬会社であるエーザイのCFOを長年務めた柳良平氏は、エーザイの人的資本、知的資本、社会資本など関連のデータを集め、それらのデータから複数のKPIをピックアップしました。

柳氏は、それらのKPIの変化と、エーザイのPBRの変化に関連性があるかどうか、統計学的な計算によって相関性を導きだしました。

その研究の結果、例えば「女性管理職比率を10%高めると、7年後に企業価値が2.4%上がる」「人件費を10%高めると、5年後に企業価値が13.8%高まる」など、統計学的に有意な相関性が導きだされる結果となりました。

この研究は、「ESGへの取り組みが本当に株主価値をあげるのか」というテーマに関する、実証的・画期的な研究成果として、世界的に高く評価されています。

この研究によって導き出された、非財務指標の影響を考慮した新たな企業価値説明の計算モデルを、柳良平氏の名前をとって「柳モデル」といいます。

当社はこの「柳モデル」を参考に、非財務資本の影響は株主価値の向上に必ずつながっていく、と考えています。
そして、当社の非財務資本=「見えない価値」をみなさまにわかりやすくお伝えするため、統合報告書に力をいれています。

人的資本関連の取り組み

当社はSaaSによって付加価値を提供する企業です。
そのため統合報告書では、非財務資本のなかでも、その付加価値の源泉である人的資本に特にフォーカスしています。

当社は「人的資本拡大に関する基本方針」を策定・公開し、この基本方針に沿ってさまざまな取り組みを行っています。

今回はそのなかから、新たに統合報告書への掲載を始めた「健康経営マップ」を説明します。

「健康経営マップ」とは

健康経営マップとは、社員の健康への投資が最終的に企業価値に結び付く戦略ストーリーを、わかりやすく図解したものです。
近年、経済産業省が各企業に作成・公開を推奨しているものであります。

当社は働く社員の健康もまた、人的資本への投資である、と考えています。そのため、統合報告書に健康経営マップを掲載しています。

健康経営マップ

マップ内に掲載されている「プレゼンティーズム」とは、出勤しているにも関わらず、心身の健康上の問題が作用して、パフォーマンスが上がらない状態のことを指します。
比較的新しい概念であり、多くの人にとって耳慣れない言葉であると思います。

また「アブセンティーズム」とは、心身の体調不良が原因による遅刻や早退、就労が困難な欠勤、休職など、業務自体が行えない状態を指します。

このように、当社は「健康経営」を表面的/画一的なものではなく、多面的な観点から捉えており、新しい概念なども積極的に取り入れながら、健康経営戦略を推進しています。

「見えない企業価値」に関するKPI

統合報告書には人的資本関連データとして、人的資本関連のさまざまなKPI(重要業績評価指標)を公開しています。

人的資本関連の詳細なKPIを掲載

非財務資本の変化は短期的に企業価値に結び付くわけではなく、その影響が出てくるには一定の年数がかかることは、先述の「柳モデル」においても指摘されています(「遅延浸透効果」といいます)。

一般的に公表を避けられがちなこういった人的資本関連のデータについて、このように広く公開する取り組みは、当社においてもまだ始まったばかりす。
当社はこれらの指標を中長期的な企業価値に結び付く重要なKPIと考え、引き続き積極的な公開に取り組んでいきます。

「価値創造プロセス」とは

統合報告書には「価値創造プロセス」を掲載しています。

価値創造につながる過程をわかりやすく図解

「価値創造プロセス」とは、「見えない企業価値」がどのように付加価値創造につながるか、ストーリーをわかりやすく図解したものです。

いまの社会の変化や課題に対して、企業がどのようなインプット(経営資源)を投入し、どのようなビジネスモデルによりそれがアウトプット(付加価値)につながっているか、わかりやすく図式化して表現しています。

この「価値創造プロセス」は、経済産業省が推進している「企業と投資家の対話のための『価値協創ガイダンス 2.0』」のフレームワークに基づき作成しています。

公式noteの紹介

統合報告書では、こちらの公式noteも紹介しています。

公式noteでも「見えない価値」をお伝えします

当社の「見えない価値」をお伝えするnoteも、引き続き盛り上げてまいります!

さいごに

「統合報告書2023」について、初めて統合報告書に触れる人でもわかりやすいよう心掛けながら、お伝えしてまいりました。

当社はこのほかにも、ログミーファイナンスでの決算説明会書き起こし記事の公開や、公式Youtubeでの個人投資家向け説明会のアーカイブ動画など、株主との対話の機会に積極的に取り組んでいます。

当社に興味をもっていただけたら、こちらもぜひチェックしてみてくださいね。

また当社は直近で、ログミーファイナンス様の主催する個人投資家向けオンライン説明会にも登壇予定です。CFOの塩川がみなさまのご質問にお答えしますので、下記サイトからぜひ参加登録をお願いします。

最後までお読みいただきありがとうございました。今後とも応援していただけますと幸いです。

本年もどうぞよろしくお願いいたします。

(ご留意事項)本記事は、情報提供のみを目的として作成しており、有価証券の販売の勧誘や購入の勧誘を目的としたものではございません。

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